『L.A.コンフィデンシャル』 陰謀を追う3人の刑事 其々の生き様
その映画が面白いかどうかは所詮、その人の好みの問題である。前評判が高い映画を観て案外退屈さを感じたり、さほど期待していなかった映画が凄く面白かった経験は誰でもあると思う。
本格的に映画を見直して約2年が経つが、まだまだボクが知らない、面白い映画は沢山あるのだろう。
『L.A.コンフィデンシャル』もそんな作品だった。何故、こんなに面白い作品を知らなかったのだろうと思うが、丁度この映画が公開された時は『タイタニック』が話題を集めており、『L.A.コンフィデンシャル』は隅に置かれてしまったようだ。
実際、アカデミー授賞式でも『タイタニック』がおおよその賞を独占したのに対し、『L.A.コンフィデンシャル』は僅かに脚色賞と助演女優賞(キム・ベイシンガー)を獲ったのみである。
この辺り、一極集中するマスメディアの有り方にも問題があると思う。
『L.A.コンフィデンシャル』は黒幕は誰かという謎解きの興味も惹くが、性格も行き方も違う3人の刑事の絡む人間模様が非常に面白い!
当初は熱血漢のバド・ホワイト(ラッセル・クロウ)が主人公と思っていたが、必ずしもそうではない。バドは父親が母親を暴力で殴り殺すというドメスティック・バイオレンスのトラウマがあり、女性に手を上げる男が許せない正義感を持っているが、自分の信じる“正義”を通す為には暴力をも厭わない矛盾を背負った哀れさを持っている。
エド・エクスリー(ガイ・ピアース)は、ロス市警伝説の刑事である父の功績を追い抜こうという昇進欲が強く、正義感も強いエリート刑事なのだが、現場の経験は少ない。初めのうちは年配の刑事から陰口を叩かれることもあるが、徐々に現場で鍛えられてしたたかになっていく。
出世の為ならパーティで酔っぱらった警官達がメキシコ系移民の容疑者に暴行する“血塗られたクリスマス事件”で仲間を告発することも辞さなかった狡猾な面を蔑視されたが、彼の正義感は筋金入りである。
更にもう一人、人気テレビ番組の監修に首を突っ込んだりしているマスコミ好きの刑事ジャック・ヴィンセンス(ケヴィン・スペイシー)は、若い上司のエドを「出世主義の若造」と内心小馬鹿にしている。彼は警察組織の裏も表も知り尽くし、かつての理想も色褪せて、今は醒めた感じで刑事人生を送っている。
だから有名人の噂話を取り扱うハッシュ−ハッシュマガジン誌のシド・ハジェンス(ダニー・デヴィート)と情報交換をして、自分の逮捕劇を写真撮影させて目立とうとする。しかし刑事として堕落しているわけでもなく、そこそこ正義感は持っている。
ロサンゼルスのコーヒーショップ「ナイト・アウル」で6人の男女が惨殺される事件が起きた。被害者の中には“血塗られたクリスマス事件”で警察を首になったばかりのバドの元同僚刑事や、彼と交際していたリタ・ヘイワースによく似た娼婦がいた。
客のうちの一人は、ハリウッド・セレブに整形などをして似せた女達が売春するクラブ「白いユリ」の一人で、そのクラブのオーナーの元へもバドは調査の手を伸ばすが、実行犯として黒人少年3人の名前が挙がり、三人を検挙する事に成功する。そしてまだ一人の女性被害者が生きていることを割り出して、女性を救い出すが、その隙に少年達は脱走する。
しかしエドは脱走した少年達をあっさり見つけ出し、抵抗したので3人とも射殺して“ナイト・アウルの虐殺”事件は、解決したかのように見えたのだが、そこには黒幕の存在があった。
ロサンゼルス市警の3人の刑事は、捜査を続けるうちに巨大な陰謀が隠された事件の真相を知る...。

『L.A.コンフィデンシャル』/ラッセル・クロウ、ガイ・ピアース&ケヴィン・スペイシー [製作10周年記念DVD]
久々に面白い映画だった! こういう刑事ものを扱う作品としてハマったのは『あるいは犬という名の裏切り』以来である。男の生き方としては誰が理想だろうか?
また高級娼婦役で出演しているキム・ベイシンガーは『ナイン・ハーフ』での妖艶な肢体で一躍有名になったのだが、やや容姿が衰えた分、人生に疲れた感じが滲み出ててそれはそれで良かった...。
個人的には『タイタニック』よりも断然、完成度が高いと思う! でも『タイタニック』は途中で飽きて、きちんと最後まで観ていないので、いい加減な評価ではある...。
本格的に映画を見直して約2年が経つが、まだまだボクが知らない、面白い映画は沢山あるのだろう。
『L.A.コンフィデンシャル』もそんな作品だった。何故、こんなに面白い作品を知らなかったのだろうと思うが、丁度この映画が公開された時は『タイタニック』が話題を集めており、『L.A.コンフィデンシャル』は隅に置かれてしまったようだ。
実際、アカデミー授賞式でも『タイタニック』がおおよその賞を独占したのに対し、『L.A.コンフィデンシャル』は僅かに脚色賞と助演女優賞(キム・ベイシンガー)を獲ったのみである。
この辺り、一極集中するマスメディアの有り方にも問題があると思う。
『L.A.コンフィデンシャル』は黒幕は誰かという謎解きの興味も惹くが、性格も行き方も違う3人の刑事の絡む人間模様が非常に面白い!
当初は熱血漢のバド・ホワイト(ラッセル・クロウ)が主人公と思っていたが、必ずしもそうではない。バドは父親が母親を暴力で殴り殺すというドメスティック・バイオレンスのトラウマがあり、女性に手を上げる男が許せない正義感を持っているが、自分の信じる“正義”を通す為には暴力をも厭わない矛盾を背負った哀れさを持っている。
エド・エクスリー(ガイ・ピアース)は、ロス市警伝説の刑事である父の功績を追い抜こうという昇進欲が強く、正義感も強いエリート刑事なのだが、現場の経験は少ない。初めのうちは年配の刑事から陰口を叩かれることもあるが、徐々に現場で鍛えられてしたたかになっていく。
出世の為ならパーティで酔っぱらった警官達がメキシコ系移民の容疑者に暴行する“血塗られたクリスマス事件”で仲間を告発することも辞さなかった狡猾な面を蔑視されたが、彼の正義感は筋金入りである。
更にもう一人、人気テレビ番組の監修に首を突っ込んだりしているマスコミ好きの刑事ジャック・ヴィンセンス(ケヴィン・スペイシー)は、若い上司のエドを「出世主義の若造」と内心小馬鹿にしている。彼は警察組織の裏も表も知り尽くし、かつての理想も色褪せて、今は醒めた感じで刑事人生を送っている。
だから有名人の噂話を取り扱うハッシュ−ハッシュマガジン誌のシド・ハジェンス(ダニー・デヴィート)と情報交換をして、自分の逮捕劇を写真撮影させて目立とうとする。しかし刑事として堕落しているわけでもなく、そこそこ正義感は持っている。
ロサンゼルスのコーヒーショップ「ナイト・アウル」で6人の男女が惨殺される事件が起きた。被害者の中には“血塗られたクリスマス事件”で警察を首になったばかりのバドの元同僚刑事や、彼と交際していたリタ・ヘイワースによく似た娼婦がいた。
客のうちの一人は、ハリウッド・セレブに整形などをして似せた女達が売春するクラブ「白いユリ」の一人で、そのクラブのオーナーの元へもバドは調査の手を伸ばすが、実行犯として黒人少年3人の名前が挙がり、三人を検挙する事に成功する。そしてまだ一人の女性被害者が生きていることを割り出して、女性を救い出すが、その隙に少年達は脱走する。
しかしエドは脱走した少年達をあっさり見つけ出し、抵抗したので3人とも射殺して“ナイト・アウルの虐殺”事件は、解決したかのように見えたのだが、そこには黒幕の存在があった。
ロサンゼルス市警の3人の刑事は、捜査を続けるうちに巨大な陰謀が隠された事件の真相を知る...。
『L.A.コンフィデンシャル』/ラッセル・クロウ、ガイ・ピアース&ケヴィン・スペイシー [製作10周年記念DVD]
久々に面白い映画だった! こういう刑事ものを扱う作品としてハマったのは『あるいは犬という名の裏切り』以来である。男の生き方としては誰が理想だろうか?
また高級娼婦役で出演しているキム・ベイシンガーは『ナイン・ハーフ』での妖艶な肢体で一躍有名になったのだが、やや容姿が衰えた分、人生に疲れた感じが滲み出ててそれはそれで良かった...。
個人的には『タイタニック』よりも断然、完成度が高いと思う! でも『タイタニック』は途中で飽きて、きちんと最後まで観ていないので、いい加減な評価ではある...。
『イヴの総て』と『サンセット大通り』を比較する
ボクがこの歳になって本格的に名作映画(古い作品ばかり)を観る契機になったのは、邦画では『天国と地獄』、洋画では『イヴの総て』である。「映画って、こんなに面白いものだったのか!」と認識させられた作品だ。
『イヴの総て』に関しては同時期に公開された『サンセット大通り』と比較される場合が多い。両作品とも映画界や演劇界のドロドロとした裏側を描き、奇しくも二人の大女優が熱演している。
今でもボクの中では『イヴの総て』の作品的評価が高いのだが、「日曜洋画劇場」で馴染み深い映画評論家の淀川長治氏は生前、「絶対に『サンセット大通り』の方が面白い!」と殊更強調していた。
「かの淀川長治氏が言うことだから、そうなのかな?」と思いつつ、『サンセット大通り』は未見だったので自分の中では今一つ納得していなかった。
今回、『サンセット大通り』をDVD鑑賞する機会があったので、両作品の比較をしてみたいと思う。
『イヴの総て』は、大女優マーゴ(ベティ・ディヴィス)に憧れる田舎娘イヴ(アン・バクスター)の出会いから始まる。イヴを気に入ったマーゴは、イヴを自宅の客間に住まわせ身の回りの世話をするようにした。
イブは頭が良く気が利き、精一杯働くのだが、マーゴはあまりに気が利きすぎるイヴが鼻に付くようになり、自分には無い若さへのコンプレックスから、恋人を奪われるのではないかと恐怖を覚えるのであった。
この辺の葛藤や周囲に当り散らす悪態振りをベティ・ディヴィスは見事に演じている。
イヴには野心があった! 恩人のマーゴに踏み台に女優になり、スターの座を掴もうとしていた。健気な振りをしながら、野望を果たすのなら手段を選ばぬ悪女ぶりは観ていて凍りついた。それによってボクは自分の過去の境遇と照らし合わせてマーゴに同情するようになった。
イヴは周囲の人間を欺き、時には強迫してマーゴが演じるはずだった配役を奪い、やがて演劇界最高の栄誉であるサラ・シドンズ賞を受賞し、逆にマーゴは第一線を退き、恋人と結婚する...。
しかしイヴの許には...。

『イヴの総て』/ベティ・デイヴィス&アン・バクスター [特別編DVD]
『イヴの総て』が二人の女優の血走る演技のぶつけ合いだったのに対し、『サンセット大通り』はグロリア・スワンソンの一人舞台だった。
ハリウッドのサンセット大通り郊外に建つ古く大きな屋敷に住む老女は、サイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモント(グロリア・スワンソン)だった。彼女は過去の栄光が忘れられず、若い頃の写真や肖像画に囲まれ、自室にある大きなスクリーンで自分がサイレント時代に出演した映画を夜な夜な観ている。
そこへ借金取りに追われた、しがない脚本家ジョー(ウィリアム・ホールデン)が潜り込んでくる。ノーマはジョーが脚本家と知ると、自分が再度ハリウッド映画に復活する為に書いたシナリオの修正作業を押付ける。
ジョーは高い報酬と贅沢な生活も悪くないと考え、修正作業に取り掛かる。やがてジョーはノーマのヒモ的存在になるが、ジョーはこの生活に違和感を覚え、夜こっそり抜け出し、恋人(正確には友人の恋人)と会うようになる。
それを知ったノーマは嫉妬のあまり、ジョーを射殺する!
この後の展開が凄かった! 殺人事件が起きた屋敷に群がるマスコミと映画関係者。カメラのスポットライトがノーマに当たる。既に妄想狂となっていたノーマは、それが女優復活への賞賛の嵐と思い込む。
復帰の第一幕は、階段から下りる場面。恍惚な表情を浮かべるノーマ。その姿を目に涙を溜めて撮る執事マックス(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)。かつてノーマに憧れた女優達は憐みの表情を浮かべる...。
この映画ではシュトロハイム監督の他に、セシル・B・デミル監督も自身の役で出演している。また当時のパラマウント社の撮影所もそのままの状態で映し出されている。
何より実際にサイレント時代のスターだったグロリア・スワンソンが、当時の置かれた立場、世間の評価に自らを投影しながら演じている姿には鳥肌が立つほどの威厳があった!
『イヴの総て』のベティ・ディヴィスが迫真の演技なら、グロリア・スワンソンは何かに取り憑かれたような妖気漂う演技だった。
淀川長治氏はサイレント時代から映画を観続けてきた生き証人だった。グロリア・スワンソンもエリッヒ・フォン・シュトロハイム監督もセシル・B・デミル監督も全盛期から知っていたであろう。また映画全盛時のパラマウントのスタジオにも何度か赴かれ、親近感を覚えていたに違いない。
そのような特別な思い入れが強ければ、『サンセット大通り』に贔屓する当然である。あくまでも映画評論は相対的なものであって、その人の感性で決まる! その作品を評する時、その人の人生経験が絡む感情に左右されても仕方がないのだ!
その点、ボクは何のしがらみも無いのでシビアに判断が出来る。作品のクォリティーは『イヴの総て』が上である。しかしグロリア・スワンソンのあの怪演振りは頭から離れない...。

『サンセット大通り』/グロリア・スワンソン&ウィリアム・ホールデン [スペシャル・コレクターズ・エディションDVD]
『イヴの総て』に関しては同時期に公開された『サンセット大通り』と比較される場合が多い。両作品とも映画界や演劇界のドロドロとした裏側を描き、奇しくも二人の大女優が熱演している。
今でもボクの中では『イヴの総て』の作品的評価が高いのだが、「日曜洋画劇場」で馴染み深い映画評論家の淀川長治氏は生前、「絶対に『サンセット大通り』の方が面白い!」と殊更強調していた。
「かの淀川長治氏が言うことだから、そうなのかな?」と思いつつ、『サンセット大通り』は未見だったので自分の中では今一つ納得していなかった。
今回、『サンセット大通り』をDVD鑑賞する機会があったので、両作品の比較をしてみたいと思う。
『イヴの総て』は、大女優マーゴ(ベティ・ディヴィス)に憧れる田舎娘イヴ(アン・バクスター)の出会いから始まる。イヴを気に入ったマーゴは、イヴを自宅の客間に住まわせ身の回りの世話をするようにした。
イブは頭が良く気が利き、精一杯働くのだが、マーゴはあまりに気が利きすぎるイヴが鼻に付くようになり、自分には無い若さへのコンプレックスから、恋人を奪われるのではないかと恐怖を覚えるのであった。
この辺の葛藤や周囲に当り散らす悪態振りをベティ・ディヴィスは見事に演じている。
イヴには野心があった! 恩人のマーゴに踏み台に女優になり、スターの座を掴もうとしていた。健気な振りをしながら、野望を果たすのなら手段を選ばぬ悪女ぶりは観ていて凍りついた。それによってボクは自分の過去の境遇と照らし合わせてマーゴに同情するようになった。
イヴは周囲の人間を欺き、時には強迫してマーゴが演じるはずだった配役を奪い、やがて演劇界最高の栄誉であるサラ・シドンズ賞を受賞し、逆にマーゴは第一線を退き、恋人と結婚する...。
しかしイヴの許には...。
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『イヴの総て』が二人の女優の血走る演技のぶつけ合いだったのに対し、『サンセット大通り』はグロリア・スワンソンの一人舞台だった。
ハリウッドのサンセット大通り郊外に建つ古く大きな屋敷に住む老女は、サイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモント(グロリア・スワンソン)だった。彼女は過去の栄光が忘れられず、若い頃の写真や肖像画に囲まれ、自室にある大きなスクリーンで自分がサイレント時代に出演した映画を夜な夜な観ている。
そこへ借金取りに追われた、しがない脚本家ジョー(ウィリアム・ホールデン)が潜り込んでくる。ノーマはジョーが脚本家と知ると、自分が再度ハリウッド映画に復活する為に書いたシナリオの修正作業を押付ける。
ジョーは高い報酬と贅沢な生活も悪くないと考え、修正作業に取り掛かる。やがてジョーはノーマのヒモ的存在になるが、ジョーはこの生活に違和感を覚え、夜こっそり抜け出し、恋人(正確には友人の恋人)と会うようになる。
それを知ったノーマは嫉妬のあまり、ジョーを射殺する!
この後の展開が凄かった! 殺人事件が起きた屋敷に群がるマスコミと映画関係者。カメラのスポットライトがノーマに当たる。既に妄想狂となっていたノーマは、それが女優復活への賞賛の嵐と思い込む。
復帰の第一幕は、階段から下りる場面。恍惚な表情を浮かべるノーマ。その姿を目に涙を溜めて撮る執事マックス(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)。かつてノーマに憧れた女優達は憐みの表情を浮かべる...。
この映画ではシュトロハイム監督の他に、セシル・B・デミル監督も自身の役で出演している。また当時のパラマウント社の撮影所もそのままの状態で映し出されている。
何より実際にサイレント時代のスターだったグロリア・スワンソンが、当時の置かれた立場、世間の評価に自らを投影しながら演じている姿には鳥肌が立つほどの威厳があった!
『イヴの総て』のベティ・ディヴィスが迫真の演技なら、グロリア・スワンソンは何かに取り憑かれたような妖気漂う演技だった。
淀川長治氏はサイレント時代から映画を観続けてきた生き証人だった。グロリア・スワンソンもエリッヒ・フォン・シュトロハイム監督もセシル・B・デミル監督も全盛期から知っていたであろう。また映画全盛時のパラマウントのスタジオにも何度か赴かれ、親近感を覚えていたに違いない。
そのような特別な思い入れが強ければ、『サンセット大通り』に贔屓する当然である。あくまでも映画評論は相対的なものであって、その人の感性で決まる! その作品を評する時、その人の人生経験が絡む感情に左右されても仕方がないのだ!
その点、ボクは何のしがらみも無いのでシビアに判断が出来る。作品のクォリティーは『イヴの総て』が上である。しかしグロリア・スワンソンのあの怪演振りは頭から離れない...。
『サンセット大通り』/グロリア・スワンソン&ウィリアム・ホールデン [スペシャル・コレクターズ・エディションDVD]
ヒッチコックの『 鳥 』 忘れじのティッピ・ヘドレン
かなり以前、街の小さな本屋で売れ残りの映画のビデオが廉価で売っていた。当時はさほど映画には興味が無かったが、タイトルを見れば有名なものかどうかの判別は付く。ただ買うほどの決心は固まらなかった。
その本屋には1〜2週間に一度のペースで寄っていた。いつまで経っても一向に売れる気配の無い映画ビデオを見てしまうと半分は同情の意味合いで、遂に何本か買ってしまった。そのうちの1本がアルフレッド・ヒッチコックの『 鳥 』である。
しかしアパートに戻っても、すぐに観ることはしなかった。「買ってしまえば、いつでも観られる!」という気持ちが支配していたのだろうか?
そうこうしているうちに、引越しがあってその土地を離れた。更に数年後、もう一度引越しをして今の場所に住んでいる。今後暫らくは引越しをするつもりはないが、詰めたダンボール箱で未開封なものが幾つかある。一々開けて整頓するのが面倒なだけなのだが...。

在庫限り★アルフレッド・ヒッチコック 『 鳥 』 ビッグポストカード
昨日、NHK−BSにて『 鳥 』が放映されていた。前日観た『サイコ』の次回作ということもあって、当時の映画ファンは、『サイコ』以上のスリルとサスペンスを味わえるだろうと勝手な期待感を持っていたらしい。その雰囲気はヒッチコックも肌身に感じていて、『サイコ』以上の作品を制作しなければならないという重圧があったと思う。
ボクも放映を楽しみに待っていたのだが、考えてみれば、ビデオを持っている...おかしな話である!
内容はくどくどと書かないが、無数の鳥の群れが何の原因も分からずに人間を襲い、街中がパニックになる映画である。この映画の素晴らしいところは、何の説明もされず、何の解決にも至らない結末だ。
鳥の群れが襲ってくる理由が判明し、善後策を検討して事態収拾に当たるという映画ではない。物語の最後は、鳥に襲われて神経が参ったヒロインのメラニー(ティッピ・ヘドレン)を車に乗せて、サンフランシスコの病院へ向かう場面で終わろうとしている。
その様子を、遥か彼方まで続く無数の鳥の群れが静かに眺めている。無事に病院に到着するかも分からない。何とも救いようもない居心地の悪さである。
本来なら何故、鳥の群れは襲うのか? 最後はどう決着がついたのかまで考えるのが監督であり、脚本家であるが、この映画に関しては下手な脚本は必要ない! そういう肉付けをしてしまうと却ってこの映画は安っぽくなっただろう。
敢えて製作者側は結末を語らず、観客に自由な想像を湧かせるのが名作たるものだ!
予想以上に『 鳥 』の曖昧な終わり方が良かったので、再度観ようと3年ぶりに未開封のダンボール箱を開けてみた。他の映画ビデオは出てきたのだが、『 鳥 』だけはどうしても見つからない!
これだけ捜しても無いってことは、ひょっとして元々買っていなかったのだろうか?
今の気分は、先入観だけに囚われて、事実が判明した時の何とも言えない居心地の悪さだ!
それにしてもヒロイン役のティッピ・ヘドレンは綺麗だった! 若い方々にはメラニー・グリフィスの母親と紹介した方が早いだろうか?
彼女は『 鳥 』に出演する前まではモデルやテレビCMに主演する程度の存在だったそうだ。偶々テレビを観ていたヒッチコックの目に留まって主役に抜擢されたのだ。
だから女優としての演技経験が無かったのだが、映像の中では仲々堂に入っていた! ヒッチコック作品ではもう一作『マーニー』でも主演しているので、こちらも観ようと思う。

『アルフレッド・ヒッチコック ベスト・セレクション』
その本屋には1〜2週間に一度のペースで寄っていた。いつまで経っても一向に売れる気配の無い映画ビデオを見てしまうと半分は同情の意味合いで、遂に何本か買ってしまった。そのうちの1本がアルフレッド・ヒッチコックの『 鳥 』である。
しかしアパートに戻っても、すぐに観ることはしなかった。「買ってしまえば、いつでも観られる!」という気持ちが支配していたのだろうか?
そうこうしているうちに、引越しがあってその土地を離れた。更に数年後、もう一度引越しをして今の場所に住んでいる。今後暫らくは引越しをするつもりはないが、詰めたダンボール箱で未開封なものが幾つかある。一々開けて整頓するのが面倒なだけなのだが...。
在庫限り★アルフレッド・ヒッチコック 『 鳥 』 ビッグポストカード
昨日、NHK−BSにて『 鳥 』が放映されていた。前日観た『サイコ』の次回作ということもあって、当時の映画ファンは、『サイコ』以上のスリルとサスペンスを味わえるだろうと勝手な期待感を持っていたらしい。その雰囲気はヒッチコックも肌身に感じていて、『サイコ』以上の作品を制作しなければならないという重圧があったと思う。
ボクも放映を楽しみに待っていたのだが、考えてみれば、ビデオを持っている...おかしな話である!
内容はくどくどと書かないが、無数の鳥の群れが何の原因も分からずに人間を襲い、街中がパニックになる映画である。この映画の素晴らしいところは、何の説明もされず、何の解決にも至らない結末だ。
鳥の群れが襲ってくる理由が判明し、善後策を検討して事態収拾に当たるという映画ではない。物語の最後は、鳥に襲われて神経が参ったヒロインのメラニー(ティッピ・ヘドレン)を車に乗せて、サンフランシスコの病院へ向かう場面で終わろうとしている。
その様子を、遥か彼方まで続く無数の鳥の群れが静かに眺めている。無事に病院に到着するかも分からない。何とも救いようもない居心地の悪さである。
本来なら何故、鳥の群れは襲うのか? 最後はどう決着がついたのかまで考えるのが監督であり、脚本家であるが、この映画に関しては下手な脚本は必要ない! そういう肉付けをしてしまうと却ってこの映画は安っぽくなっただろう。
敢えて製作者側は結末を語らず、観客に自由な想像を湧かせるのが名作たるものだ!
予想以上に『 鳥 』の曖昧な終わり方が良かったので、再度観ようと3年ぶりに未開封のダンボール箱を開けてみた。他の映画ビデオは出てきたのだが、『 鳥 』だけはどうしても見つからない!
これだけ捜しても無いってことは、ひょっとして元々買っていなかったのだろうか?
今の気分は、先入観だけに囚われて、事実が判明した時の何とも言えない居心地の悪さだ!
それにしてもヒロイン役のティッピ・ヘドレンは綺麗だった! 若い方々にはメラニー・グリフィスの母親と紹介した方が早いだろうか?
彼女は『 鳥 』に出演する前まではモデルやテレビCMに主演する程度の存在だったそうだ。偶々テレビを観ていたヒッチコックの目に留まって主役に抜擢されたのだ。
だから女優としての演技経験が無かったのだが、映像の中では仲々堂に入っていた! ヒッチコック作品ではもう一作『マーニー』でも主演しているので、こちらも観ようと思う。
『アルフレッド・ヒッチコック ベスト・セレクション』
再掲載:『あるいは裏切りという名の犬』 嫉妬心を上手く活かせなかった男
昨夜(正確には本日深夜)、NHK−BSで放映されたフランス映画『あるいは裏切りという名の犬』を観た。深夜1時近くの放映開始で、2時間の放映時間。終わるのは3時前だった。普通なら翌日の仕事に差し障るので、こんな遅くまで起きていないのだが、今日は文化の日、祝日であるので気兼ねなく観ることが出来た。
尚、ボクにはDVD録画をして時間が空いた時に観るという賢い習慣が無い!
物語は、パリ警視庁に入署してからの勤務年数、階級、逮捕実績等が甲乙付け難く、互いに部署の長となっている二人の警視がいた。一人はBRI(探索出動班)所属、部下からの人望厚く正義感溢れるレオ・ヴリンクス警視。もう一人はBRB(強盗鎮圧班)所属、権力志向の強いドニ・クラン警視である。
かつて親友だった二人だったが、同じ女性カミーユを愛してしまったことから亀裂が走るようになった。結局、彼女はレオと結婚したのだが、以来二人の友人関係は崩れ、今では署内でも有名なライバル関係となっている。
そんな折、二人の上司ロベール長官の転任が決まり、自分の後釜にはレオが相応しいと考えていた。
会議が終わった後、ロベールがレオを呼んで個室に入るところを眺めていたドニは苦々しく思っていた。このままではレオに先を越されてしまう! ドニは激しくレオに嫉妬心を燃やしていたのだ。
パリでは現金輸送車強奪事件が多発して、パリ警視庁は犯人に繋がる手掛かりも掴めずに市民から非難轟々の状況だった。この為、パリ警視庁は特別チームを敷き、上司ロベールはレオを指揮官に任命した。
この一連の事件は当初からドニが追っていた。ライバルに手柄をさらわれることが面白くなかったドニは、ロベールに特別チームへの参加を直訴した。ロベールはレオの指令の下に動くことを条件に許可をする...。
しかしドニはライバルであるレオの指揮には従わず、手柄を取ろうとして単独行動を取る。結果、インサイダーからの情報からアジトまで突き詰めたのに、犯人の逃亡を許した他、同僚エディが凶弾に倒れてしまう。
こうして二人は増々対立していくのだが、ドニは自己保身と出世欲の為にレオを窮地に貶める...。

『あるいは裏切りという名の犬』/ジェラール・ドパルデュー&ダニエル・オートゥイユ [DVD]
嫉妬心は表面に出さないまでも誰でも持っていると思う。たとえそれが清廉で善良なる者であっても無意識のうちに湧き上がってくるものだ。
男なら向上心の裏返しで学業成績や仕事の業績、評価等での比較で起きる。「何故、あいつの方が上なんだ!」というマイナス感情は「自分ならもっと上手く出来る。」と錯覚を起こすものだ。
また女なら潜在的に容貌の維持、身体の衰えに不安を抱いているので、自分の配偶者や恋人が若い女性に惹かれることに凄まじい嫌悪感を持つ。
大概の人は、相手がどのような立場にいる人か関係なく自分と比較してしまうから嫉妬心やコンプレックスが湧いて自己嫌悪に陥ってしまうのだ。もしこれが自分がどう頑張ろうと全然手が届かない存在の相手なら嫉妬ではなく羨望するのだが...。
だが現実はそう考える人は稀であるし、嫉妬心を抑えることは仲々難しい! だからこそ相手に嫉妬した時、自分の気持ちを落ち着ける方法は持っておくべきだ。
しかし現実、そこまで完璧な人間はほとんどいないだろう。仮にその場を難なく過ごせても、嫉妬心(悔しさ)は、家に帰れば再び持ち上がってくることもある...。

「嫉妬の人間学」
嫉妬心に2種類あり、相手の足を引っ張って自分の立場を上にしようとする「エンビー型嫉妬」(『あるいは裏切りという名の犬』のドニ警視は将にこれだ!)と、自分の能力を伸ばして相手に認めさせ見返す「ジェラシー型嫉妬」である。
処で「ジェラシー型嫉妬」は動機は別として、自分を磨いて向上させる効用がある。実際「ジェラシー型嫉妬」に依って、組織力が高まると言われている。
その人の考え方次第だが、嫉妬心をプラスに働かせることは大切だ。
だから『あるいは裏切りという名の犬』のドニ警視のようにライバルの失点を喜ぶような男にはなりたくない!
尤もこの映画では一方的に悪人風に描かれたドニではあるが、彼の立場になって考えれば気持ちが分からないでもない...。同格の者と比べて「自分が先に!」「自分が上に!」と思うのは正直だからだ。
要はそれをどう行動に移すかである!
それにしてもこの映画タイトル...やや異様である。きっと『あるいは〜』の前には「お前は親友なのか?」という言葉が隠されているのだろう。
尚、ボクにはDVD録画をして時間が空いた時に観るという賢い習慣が無い!
物語は、パリ警視庁に入署してからの勤務年数、階級、逮捕実績等が甲乙付け難く、互いに部署の長となっている二人の警視がいた。一人はBRI(探索出動班)所属、部下からの人望厚く正義感溢れるレオ・ヴリンクス警視。もう一人はBRB(強盗鎮圧班)所属、権力志向の強いドニ・クラン警視である。
かつて親友だった二人だったが、同じ女性カミーユを愛してしまったことから亀裂が走るようになった。結局、彼女はレオと結婚したのだが、以来二人の友人関係は崩れ、今では署内でも有名なライバル関係となっている。
そんな折、二人の上司ロベール長官の転任が決まり、自分の後釜にはレオが相応しいと考えていた。
会議が終わった後、ロベールがレオを呼んで個室に入るところを眺めていたドニは苦々しく思っていた。このままではレオに先を越されてしまう! ドニは激しくレオに嫉妬心を燃やしていたのだ。
パリでは現金輸送車強奪事件が多発して、パリ警視庁は犯人に繋がる手掛かりも掴めずに市民から非難轟々の状況だった。この為、パリ警視庁は特別チームを敷き、上司ロベールはレオを指揮官に任命した。
この一連の事件は当初からドニが追っていた。ライバルに手柄をさらわれることが面白くなかったドニは、ロベールに特別チームへの参加を直訴した。ロベールはレオの指令の下に動くことを条件に許可をする...。
しかしドニはライバルであるレオの指揮には従わず、手柄を取ろうとして単独行動を取る。結果、インサイダーからの情報からアジトまで突き詰めたのに、犯人の逃亡を許した他、同僚エディが凶弾に倒れてしまう。
こうして二人は増々対立していくのだが、ドニは自己保身と出世欲の為にレオを窮地に貶める...。
『あるいは裏切りという名の犬』/ジェラール・ドパルデュー&ダニエル・オートゥイユ [DVD]
嫉妬心は表面に出さないまでも誰でも持っていると思う。たとえそれが清廉で善良なる者であっても無意識のうちに湧き上がってくるものだ。
男なら向上心の裏返しで学業成績や仕事の業績、評価等での比較で起きる。「何故、あいつの方が上なんだ!」というマイナス感情は「自分ならもっと上手く出来る。」と錯覚を起こすものだ。
また女なら潜在的に容貌の維持、身体の衰えに不安を抱いているので、自分の配偶者や恋人が若い女性に惹かれることに凄まじい嫌悪感を持つ。
大概の人は、相手がどのような立場にいる人か関係なく自分と比較してしまうから嫉妬心やコンプレックスが湧いて自己嫌悪に陥ってしまうのだ。もしこれが自分がどう頑張ろうと全然手が届かない存在の相手なら嫉妬ではなく羨望するのだが...。
だが現実はそう考える人は稀であるし、嫉妬心を抑えることは仲々難しい! だからこそ相手に嫉妬した時、自分の気持ちを落ち着ける方法は持っておくべきだ。
しかし現実、そこまで完璧な人間はほとんどいないだろう。仮にその場を難なく過ごせても、嫉妬心(悔しさ)は、家に帰れば再び持ち上がってくることもある...。
「嫉妬の人間学」
嫉妬心に2種類あり、相手の足を引っ張って自分の立場を上にしようとする「エンビー型嫉妬」(『あるいは裏切りという名の犬』のドニ警視は将にこれだ!)と、自分の能力を伸ばして相手に認めさせ見返す「ジェラシー型嫉妬」である。
処で「ジェラシー型嫉妬」は動機は別として、自分を磨いて向上させる効用がある。実際「ジェラシー型嫉妬」に依って、組織力が高まると言われている。
その人の考え方次第だが、嫉妬心をプラスに働かせることは大切だ。
だから『あるいは裏切りという名の犬』のドニ警視のようにライバルの失点を喜ぶような男にはなりたくない!
尤もこの映画では一方的に悪人風に描かれたドニではあるが、彼の立場になって考えれば気持ちが分からないでもない...。同格の者と比べて「自分が先に!」「自分が上に!」と思うのは正直だからだ。
要はそれをどう行動に移すかである!
それにしてもこの映画タイトル...やや異様である。きっと『あるいは〜』の前には「お前は親友なのか?」という言葉が隠されているのだろう。
『陰陽師』 平安時代の怨霊信仰
昨夜、NHKBSにて『陰陽師』を放映していた。この映画の公開は今から9年前で、当時女子高生を中心に漫画の単行本が売れに売れ、映画も大ヒットしたと聞く。
しかしボクは全く興味が無かった。この手の映画は映像技術に走る傾向があり、リアリズムを感じられないからだ。演出を映像技術に頼ってしまうと、若い俳優の演技力は育たない。この映画に出演していた俳優はほとんどが自分より年下ということもあってか、どうしても演技の表現不足が目に向いてしまう...。
それでも歴史には人一倍興味がある。平安時代の“怨霊信仰”は井沢元彦の様々な本で読んでいたので、そのような観点から『陰陽師』を鑑賞していた。まぁ、ボクにとっては題材だけが興味を惹かせたわけである。
何故、執拗に平安の都の転覆を図ったのか、それに早良親王がどう関わっていたのかについて述べてみたい。
早良親王とは桓武天皇の実弟であり、光仁天皇(二人の実父)亡き後の皇位継承の問題で桓武天皇から疎まれていた人物なのだ。桓武天皇は自分の息子である安殿(あて)親王に皇位継承させたかった。そうすると光仁天皇の遺志で皇太子になった早良親王の存在が邪魔であったのだ。

ポイント10倍! 『陰陽師』/野村萬斎、伊藤英明、真田広之、小泉今日子 [DVD]
ボクらは日本史で朝廷の都が移された順番として奈良の平城京、平安の平安京と覚えてきた。しかし実際には平城宮から平安京に遷都する間に長岡京という都(現在の京都府長岡京市)が造られていたのだ!
当時の朝廷は2つの勢力が競い合っており、桓武天皇側についていたのは新興貴族の藤原氏。早良親王側についていたのは、旧勢力の大伴家持一族であった。
そんな矢先、長岡京の造営責任者である藤原種継が、桓武天皇の留守中に暗殺される事件が起きた。長岡に戻った桓武天皇は首謀者が反目勢力の大伴継人の仕業だと知ると、これを機に大伴一族の一掃を図ったのだ。それは関与者数十人を僅か一日で処刑するという早業であった...。
更にそれでも飽き足らず、実弟の早良親王を事件の黒幕と断定し、捕らえた後に皇太子の位を剥奪。乙訓寺に幽閉した後に淡路島に島流しする処分を決めたのだ。
この時、早良親王には一切の弁明も許されなかった。実際、早良親王が本当に事件に関与していたかは不明である。早良親王は断固無実を訴え、抗議の意志を貫く為に一切の飲食を拒んだので、島流しされる前に衰弱死してしまう...。
さぞかし無念であっただろう。
この後、桓武天皇の望み通り、安殿親王(後の平城天皇)が皇太子の地位に就く...。しかしこの頃から桓武天皇の近親者が相次いで亡くなる。桓武天皇の妻旅子(たびこ)が没し、その悲しみが癒されない2年後に今度は妻旅子も没する。
更に翌年、実母高野新笠(たかのにいがき)が病死。その翌年には皇后乙牟漏(おとむろ)も突然死するという...。
災いはそれだけでは留まらず、その年の秋から冬にかけ長岡や畿内に疫病が蔓延して多くの人々が亡くなり、それらに怖れた一部の人々の心が荒廃していき、遂には伊勢神宮の正殿などが盗賊に放火される事件が起こったのだ!
また地震や雷雨などの天変地異も頻発し、そんな時に安殿親王が原因不明の重病で寝込んでしまう...。
さすがにここまで来ると「早良親王の祟りが起こしている。」と当時の陰陽師に進言されたこともあり、桓武天皇は直ちに淡路島にある早良親王の墓に勅使を送って、霊への鎮謝・慰霊を行った。更には早良親王の遺体を淡路島から奈良へ改葬し、怨霊鎮祀を限りを尽くしたのだが、一向に祟りは収まらなかったようだ。
そこで桓武天皇は怨霊に囲われた長岡京を捨て、平安京へ遷都したのである。
厳密に言うならば、平安時代は平安遷都が行われる前の長岡京の10年を含めるのが正しいと言える。尚、平安遷都後も早良親王の祟りは衰えず、桓武天皇は観念したように自分が皇太子の位を剥奪した早良親王に“祟道天皇”という尊号を与えたのである。
この辺りの歴史の出来事を知った上での『陰陽師』ならば、単に特撮を楽しむエンターテイメントだけではなく、早良親王の生涯に哀れみを持つ面も芽ばえただろう。残念ながらその描写は少なかったが...。
まぁ、歳を取ってしまうとこのような類の映画は敬遠してしまう! 趣向は人それぞれ。ボクは社会派やヒューマンドラマと呼ばれる映画の方を好む。勝手だ!

『山河遥かなり』/イワン・ヤンドル、モンゴメリー・ クリフト
しかしボクは全く興味が無かった。この手の映画は映像技術に走る傾向があり、リアリズムを感じられないからだ。演出を映像技術に頼ってしまうと、若い俳優の演技力は育たない。この映画に出演していた俳優はほとんどが自分より年下ということもあってか、どうしても演技の表現不足が目に向いてしまう...。
それでも歴史には人一倍興味がある。平安時代の“怨霊信仰”は井沢元彦の様々な本で読んでいたので、そのような観点から『陰陽師』を鑑賞していた。まぁ、ボクにとっては題材だけが興味を惹かせたわけである。
何故、執拗に平安の都の転覆を図ったのか、それに早良親王がどう関わっていたのかについて述べてみたい。
早良親王とは桓武天皇の実弟であり、光仁天皇(二人の実父)亡き後の皇位継承の問題で桓武天皇から疎まれていた人物なのだ。桓武天皇は自分の息子である安殿(あて)親王に皇位継承させたかった。そうすると光仁天皇の遺志で皇太子になった早良親王の存在が邪魔であったのだ。
ポイント10倍! 『陰陽師』/野村萬斎、伊藤英明、真田広之、小泉今日子 [DVD]
ボクらは日本史で朝廷の都が移された順番として奈良の平城京、平安の平安京と覚えてきた。しかし実際には平城宮から平安京に遷都する間に長岡京という都(現在の京都府長岡京市)が造られていたのだ!
当時の朝廷は2つの勢力が競い合っており、桓武天皇側についていたのは新興貴族の藤原氏。早良親王側についていたのは、旧勢力の大伴家持一族であった。
そんな矢先、長岡京の造営責任者である藤原種継が、桓武天皇の留守中に暗殺される事件が起きた。長岡に戻った桓武天皇は首謀者が反目勢力の大伴継人の仕業だと知ると、これを機に大伴一族の一掃を図ったのだ。それは関与者数十人を僅か一日で処刑するという早業であった...。
更にそれでも飽き足らず、実弟の早良親王を事件の黒幕と断定し、捕らえた後に皇太子の位を剥奪。乙訓寺に幽閉した後に淡路島に島流しする処分を決めたのだ。
この時、早良親王には一切の弁明も許されなかった。実際、早良親王が本当に事件に関与していたかは不明である。早良親王は断固無実を訴え、抗議の意志を貫く為に一切の飲食を拒んだので、島流しされる前に衰弱死してしまう...。
さぞかし無念であっただろう。
この後、桓武天皇の望み通り、安殿親王(後の平城天皇)が皇太子の地位に就く...。しかしこの頃から桓武天皇の近親者が相次いで亡くなる。桓武天皇の妻旅子(たびこ)が没し、その悲しみが癒されない2年後に今度は妻旅子も没する。
更に翌年、実母高野新笠(たかのにいがき)が病死。その翌年には皇后乙牟漏(おとむろ)も突然死するという...。
災いはそれだけでは留まらず、その年の秋から冬にかけ長岡や畿内に疫病が蔓延して多くの人々が亡くなり、それらに怖れた一部の人々の心が荒廃していき、遂には伊勢神宮の正殿などが盗賊に放火される事件が起こったのだ!
また地震や雷雨などの天変地異も頻発し、そんな時に安殿親王が原因不明の重病で寝込んでしまう...。
さすがにここまで来ると「早良親王の祟りが起こしている。」と当時の陰陽師に進言されたこともあり、桓武天皇は直ちに淡路島にある早良親王の墓に勅使を送って、霊への鎮謝・慰霊を行った。更には早良親王の遺体を淡路島から奈良へ改葬し、怨霊鎮祀を限りを尽くしたのだが、一向に祟りは収まらなかったようだ。
そこで桓武天皇は怨霊に囲われた長岡京を捨て、平安京へ遷都したのである。
厳密に言うならば、平安時代は平安遷都が行われる前の長岡京の10年を含めるのが正しいと言える。尚、平安遷都後も早良親王の祟りは衰えず、桓武天皇は観念したように自分が皇太子の位を剥奪した早良親王に“祟道天皇”という尊号を与えたのである。
この辺りの歴史の出来事を知った上での『陰陽師』ならば、単に特撮を楽しむエンターテイメントだけではなく、早良親王の生涯に哀れみを持つ面も芽ばえただろう。残念ながらその描写は少なかったが...。
まぁ、歳を取ってしまうとこのような類の映画は敬遠してしまう! 趣向は人それぞれ。ボクは社会派やヒューマンドラマと呼ばれる映画の方を好む。勝手だ!
『山河遥かなり』/イワン・ヤンドル、モンゴメリー・ クリフト